助左衛門を助けた赤亀
(両津市水津)
水津から南方へ300bくらいの海岸に、洞門のある大きな岩がある。これを赤亀(あかがめ)岩とよんでいる。
ここに明亀神社が、まつってある。
むかし、水津に越後屋助左衛門という漁師がいた。
ある日、海も凪(な)いでいたので、漁師衆を集めて、八挺櫓の船で、沖へ漁に出た。
この日は大漁で、みんなよろこんだ。さて帰ろうとすると、急に深い霧がかかったように、あたりが暗くなってきた。これは困ったことになったと思っていると、船のオモテ(へさき)に、畳半じょうくらいのおおきな赤亀が浮かんできた。
助左衛門は「こりゃ、亀とは縁起のいいことだ」とよろこび「どうか、亀さん、この深い霧がはれますようにお助け下さい」とお願いした。亀は何もいわなんだ。助左衛門は、もう一度頼んだ。しかし、亀は何もいわず、涙を流していた。霧はますます深くなってきた。その時、亀は急に泳ぎ出した。
助左衛門は、これは助けてくれるにちがいないと思いながら、この亀のあとに船を漕いだ。すると、まもなく、急にパッとあかるく晴れてきた。そして、亀によく似た明亀岩のところへ来ていた。
助左衛門は、夢からさめたような心もちであった。これは、赤亀がいつしか、ここまでみちびいて来てくれたものだと思った。そして家へ帰り、土地の人々に、このことを話した。
ところが、助左衛門は、あの亀が涙を流していたことが、気にかかってならなかった。すると、その晩、助左衛門の夢枕に、亀があらわれて「名がほしい」と、なんども繰り返していった。
さっそく翌朝助左衛門は、土地の人たちを集め、昨夜の話をして、この赤亀岩の上に神社を建てることにした。
今でも、助けられた旧暦8月1日を祭りの日としており、またこの神社の鍵取りも助左衛門の家で代々つとめている。
戻る